第5話: カザマのラタンチェアと生きる60代女性の美しき非日常
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「非日常」は魅力的。当たり前の「日常」ではないのだから、いつも新鮮な気持ちで日々を送ることができる。日常生活から離れ海外リゾートに出かけた時のような「非日常」を、インテリアコーディネートで暮らしに取り入れることができれば、毎日がより彩り豊かに変化するのではないだろうか。
今回取り上げるカザマのラタンチェアは、籐家具メーカーのパイオニアとして90年以上の歴史を持つカザマにしかつくれない“本物の癒し”をくれる逸品。60代女性がひとりで暮らす部屋のリビングを想定し、カザマのラタンチェアを中心にした美しい非日常のつくり方を見てみよう。
カザマが商品に込めたストーリー
籐家具一筋100年「カザマ」の正体
第1話: 日本における籐家具の“先駆者”老舗メーカー『カザマ』が語る籐家具の真実
第2話: 見惚れずにはいられない 籐と本気で向き合うカザマの籐家具作り
第3話: その想いに目頭が熱くなる 籐と本気で向き合ってきたカザマの100年
第4話: 30代女性が見つけたカザマのラタンチェアとモダンの素敵な関係
第5話: カザマのラタンチェアと生きる60代女性の美しき非日常 ← 今回の記事
「ええ、そうなんです。カザマのラタンでお願いします。大切な人に贈るんですから、ささくれなんてもってのほかなの。変な素材や仕上げのものだと意味がないから。くれぐれもカザマでお願いしますね」
電話を切りカザマのラタンチェアに深く腰掛けたのは60代の女性。この部屋でひとりで暮らしている。女性は小さい頃からラタンの家具が好きだった。彼女が育った南九州の旧家、その洋間にもラタンフレームのソファセットがあり、優雅な雰囲気を醸し出していた。このリビングにあるカザマのラタンチェアは数年前に先立った夫と一緒に使っていたもので、他のラタン製のアイテムはこのチェアに合わせてコーディネートしたものだった。
「ラタンと好相性なものはラタンだよ」
女性は夫の言葉とともに、この部屋をつくった時のことを思い出した。ラタン編みのモチーフを使ったクロスの壁面が囲む空間。夫はカザマのラタンチェアに色やスリットを合わせたラタンフレームのソファを組み合わせた。ソファだけではない。リビングテーブルや照明にもラタンを合わせたのだが、チェアやソファと変化をつけるため、ブラックではなくラタン本来の色味を活かしたナチュラルカラーでぬくもりを添えた。
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「このラグだけは私が譲らなかったのよね。ほらご覧なさい、自然のぬくもりあふれる空間がリゾートホテル風に格上げしたでしょう」
女性は、瞼の裏の夫に微笑みかけた。ジュートの織物を敷こうという夫に対し、アジアンリゾートの雰囲気を再現したかった女性が選んだオーセンティックなオリエンタルデザインのラグ。カザマのラタンチェア、壁や天井に施したブラウンのモールディングも手伝って、自然の素材感あふれるコーディネートをリゾートホテルの風格にランクアップさせたのだ。
「君のセンスには脱帽だよ。ラタン製のゆりかごで審美眼も育ったのかな」
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コーディネートの仕上げは、アジアンリゾート気分を盛り上げる観葉植物などのデコレーション。葉の形が個性的で生命力あふれる観葉植物に加え、アジアンデザインのアートを壁面に飾り、程よいアクセントに。壁のアートは昨年嫁いだひとり娘と一緒に選んだものだ。
夫のいない非日常がいつの間にか日常となった今、それでもこの日本にあって、この場所だけはアジアンリゾートの非日常の時間を刻んでいる。カザマのラタンチェアのスリットを、東南アジア特有の湿気を帯びた風が吹き抜けるように。
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「さぁ、これからカザマのラタンチェアと一緒に新しい非日常が始まるのね!」
女性がつぶやくと同時に玄関のチャイムが鳴った。今日は娘が出産のために里帰りする日。もう数日したら、初めての孫と出会えるのだ。その時には、先ほど注文した新しいカザマのラタンチェアも届くだろう。女性は、新しい非日常を迎えるワクワクに目を輝かせた。